DEN BLOG

安全・安心な建物を設計するために~基礎梁編~

2023.12.05

こんにちは。構造設計部の堀内です。
今年も残すところ、あとわずかとなりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さっそくですが、シリーズ『安全・安心な建物を設計するために Vol.2』は、基礎梁についてお話いたします。
今回の内容はいつもに比べて【構造】の話になっているため、ご興味のある方は先に読み進んで頂けますと幸いです。

基礎梁(きそばり)は、地中梁(ちちゅうばり)とも呼ばれています。
名前の通り地中にある梁なので地中梁と呼ばれています。
私自身が入社した頃、先輩方が「地中梁」と言っていたので私も地中梁と言っていましたが、
日本建築学会等の基準書や計算プログラムにおいて「基礎梁」という表現が使われていたため、
基礎梁という呼び方をするようになりました。
「地中梁」という言い方をする人が多い気がしますが、断固として「基礎梁」と呼んでいます!(笑)

基礎梁を設計するにあたり最近私が気を付けていることは、基礎梁のコンクリートの打ち継ぎレベルです。
建物の下部構造は基礎と基礎梁で構成されており、一般的に基礎と基礎梁は同じタイミングで
コンクリート打設を行います。
◆コンクリート打設:コンクリートを決まった場所に流しこむことです。

基礎梁の上にある1階スラブ(床)は、基礎と基礎梁のコンクリート打設が終わってから
配筋を行い、その後単独でコンクリート打設を行います。

①基礎梁の上に増打ちを行いその上にスラブが来る場合は、絵のように基礎梁天端まで
コンクリート打設を行えば問題ありません。

◆天端(てんば):上面のことです。
ただし、増打ち補強筋と呼ばれる鉄筋をあらかじめ設置しておかなければなりません。

では、②スラブが基礎梁の真上もしくは、③基礎梁天端がスラブ天端と同一のとき、
④梁せいが大きいときはどうでしょうか。

②スラブが基礎梁の真上にあるときは、①と同様に基礎梁天端までコンクリート打設を
行うことでよいと思います。基礎梁とスラブが一体の構造物となるよう、こちらも①と同じく
あらかじめ鉄筋を設置します。絵の中の逆向きのL字のようなもののことで、
差し筋(さしきん)と呼ばれています。

③基礎梁天端がスラブ天端と同一のときは…その都度考える必要があります。
今回、建物の1番端っことなる部分(外端部)の絵を描きました。③の場合、一般部のスラブでは
①や②にようにあらかじめ鉄筋を設置することは無いのですが、絵で描いている
建物の端っこの部分はスラブの鉄筋が基礎梁内に必ず入って来るため、
差し筋忘れに注意が必要です。
今回描いた絵では、スラブの鉄筋が入って来るレベルよりも下にコンクリートの打ち継ぎ
レベルをもってきた絵にしているため、実は差し筋が不要なのです!
では、差し筋を入れればスラブの真下でコンクリートの打ち継ぎレベルを
もってきてもよいのか、と考えるかもしれません。これは危険です!
基礎梁の上端筋(主筋)があるレベルにコンクリートの打ち継ぎ面がくると鉄筋コンクリート造として
重要な付着がとれなくなり、鉄筋とコンクリートの一体性に問題が生じます。
このため、基礎梁自体を一体でコンクリート打設ができないときは、上端筋に対して
余裕を持って打ち継ぎレベルを決める必要があります!

④梁せいが大きいときも考え方は③と同じです。

絵のようにコンクリートの打ち継ぎを行うときは、あらかじめフック形状のあばら筋を
配筋しておき、後からコンクリートを打設する部分と一体となるようにしています。

これらはほんの一例ですが、同じ「基礎梁」であっても建物ごとに施工の仕方は違うのです!

そして、①~④のどの場合でも基礎梁のコンクリート打設を行った翌日または翌々日までに
品質管理の観点で高圧洗浄機によるレイタンス除去=表面処理を行う必要があります。
品質管理のお話はまた別の機会にしたいと思います。

今回のお話は監理業務を通して私自身が学んだことなのですが、現場に行って
見たこと聞いたこと学んだことを設計に活かし、設計段階で施工性も考えた
構造設計ができるよう来年も精進してまいります。
年末ご多忙の折ではございますが、皆様のご健康とご多幸をお祈りいたしております。
来年も、ご指導・ご鞭撻の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
構造設計部 堀内