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木造住宅と太陽光パネルの重量

2023.07.14

 

こんにちは。構造設計部2年目の中谷です。

 

今回は近年よくみかけるようになった太陽光パネルについて、構造的な視点からお話します。

 

現在、某木造2階建ての戸建住宅の設計に取り組んでおり、当初よりZEH(ゼッチ)の検討を進めています。

ZEH(ゼッチ)とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、

住宅の断熱性能や省エネ性能の向上、太陽光発電などの創エネ(※1)の導入によって、年間の一次エネルギー消費量

(※2)をおおむねゼロ以下にする住宅のことを指します。

ZEHには、居住性や経済面、災害時など様々な面でメリットがあります。

※1 : 創エネとはエネルギーをつくるという意味で、住宅においては主に太陽光発電システムなどを指します。

※2 : 一次エネルギー消費量とは、家庭内で使用する設備(冷暖房、換気、照明、給湯など)の消費エネルギーの合計の

ことで、ZEHの検討では高効率の設備機器を採用することで、一次エネルギー消費量の削減を目指します。

 

もしかしたら、ブログを読まれている方の中にも、太陽光パネルの設置を検討されている方がいるかもしれませんが、

その住宅に太陽光パネルの重量は考慮されているでしょうか。

実は、小規模な木造住宅では考慮されている可能性が低いと考えられます。

なぜなら、木造2階建て以下で一般的な規模の住宅であれば、建築基準法上の仕様規定の簡易な計算を満足すればよく、

構造計算を必要としないからです。

その仕様規定の計算(壁量計算という)には、「重い屋根」と「軽い屋根」という定義があり、その根拠となる重量の中には

当然太陽光パネルの重量は含まれていません。

現在計画中の住宅では、軽い金属屋根に太陽光パネルを設置するので、

600N/㎡(軽い屋根) + 250N/㎡(太陽光パネル・架台) = 850N/㎡ < 900N/㎡(重い屋根)

というように、仕様規定上は軽い屋根の仕様で検討してよいところ、太陽光パネルを考慮して、重い屋根の仕様で検討を行っています。

現行の基準において、このような場合に太陽光パネルの重量を見込むか否かの判断は設計者にゆだねられています。

これからの住宅には太陽光パネルの設置がますます増えることが考えられるため、構造計算や太陽光パネル等の重量を考慮した検討

を行う必要があると考えています。

 

余談ですが、現在、国土交通省では、「ZEH水準等の建築物における壁量基準」の案が公表されています。

まだ案の段階であり、現在公表されているものでは計算に使用する係数が大きすぎて、経済性が悪くなることが考えられたため、

今回は採用していません。基準は毎年更新されていくので、逐一確認するのが大変ですが、施行され次第確認したいと考えています。

 

構造設計部 中谷