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屋上駐車場の転落事故防止壁の設計

2022.12.02

こんにちは。構造設計部の堀内です。

昨年のちょうど同じころブログを更新し現場監理の際の寒さ対策について
お話をしていましたが、今年も寒さ対策が必要な時期がやってきました!
今冬も寒さ対策をしっかり行って現場監理等がんばりたいと思います。

さて、皆さんは商業施設等に買い物に行った際、屋上駐車場に車をとめたことはありますか。
屋上駐車場には車が誤って転落しないよう周囲に壁があります。お気づきですか?
ただし、車の誤った操作というのは通常考え得る程度の誤操作のことです。

先日、設計に加わった鉄骨造の建物の屋上が駐車場だったため駐車場周囲の
壁の検討を行いました!

この壁は「自動車の転落事故を防止するための壁」ということで構造設計の指針があります。
参照:建築物の構造関係技術基準解説書(2020年版)P.312~
「駐車場における自動車転落事故を防止するための装置等に関する設計指針」

転落防止壁の設計では下記の衝撃力を用います。
衝撃力は2トンの自動車が時速20kmで直角に衝突することを想定しています。
・衝撃力 :250kN(キロニュートン)
・衝突位置:床面からの高さ60cmの位置(0.6m)
・衝撃力の分布幅:自動車のバンパーの幅160cm=1.6m
・先端にかかる荷重=250kN÷1.6m÷1.5=105kN/m

転落防止壁を片持ち版として計算すると・・・

先端にかかる荷重は105kN/mなのでM=105kN/m × 0.6m = 63kN・m/m (1mあたりの曲げモーメント)
必要鉄筋量at=M÷(ft×j)=63kN・m/m×1000000÷(295×122.5)=1744mm2/m・・・★
・ft:鉄筋の短期許容応力度=295N/mm2
・j:梁の応力中心間距離7d/8=7 × 140 ÷ 8 = 122.5mm
・d:有効梁せい=壁厚さ180mm ― 鉄筋重心位置40mm = 140mm

★必要鉄筋量が1mあたり1744mm2ということがわかりました!

必要鉄筋量を満足するようにさらに計算すると、今回はD16@100という配筋となりました。

鉄筋量の計算の流れは大学の授業でも学習するくらい構造計算の基本的な部分ですが
どの新築物件でも必ずこの計算を行います。
実務では電算プログラム等の計算ソフトがあるため自分でノートに書いて計算することは少ないですが、
現在大学で構造力学や構造設計を学んでいる方がいらっしゃれば何回も復習することをお勧めします!

屋上駐車場等の周囲にある壁は構造設計と関係ないように見えますが、建物に取り付く部材は
すべて安全性を担保できるよう計算を行っているのです!

構造設計部 堀内