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耐震改修工事

2020.03.13

こんにちは。構造設計部の堀内です。
前回のブログ(2019/11/28)で話をしました耐震改修工事の続きについてお話いたします。

基礎工事の次は地上の工事の始まりです。
今回の耐震改修工事では、既存建物の手前に新しく柱と梁を組み、柱と梁に囲まれたフレーム内にブレースを設置します。
新設する柱と梁は鉄骨鉄筋コンクリート造であるため、まず鉄骨を組み立て、その後鉄筋を配置しコンクリートを流し込みます。

一気に話すととても長くなるので鉄骨の組み立てだけに着目してお話いたします。

鉄骨というのはH形鋼や角形鋼管、プレート…など『鉄』でつくられた部材のことです。
鉄骨は鉄骨工場で製作され、工事現場に搬入されます。
私たち設計者は設計を行った段階で『設計図』をつくっているのですが、鉄骨工場は『設計図』をもとに
『鉄骨製作図』を作成し鉄骨部材を製作します。

今回の耐震改修工事では鉄骨の柱と梁を地上1階~地上7階まで組み立てていくのですが、
ただ垂直に組み立てていくだけではなく既存建物とも接合しなければなりません。
『既存建物と接合する』ことは耐震補強という観点では重要です。

既存建物との接合方法は前回のブログでもお話をした『アンカー』という部材を使用して、既存建物と新設の柱・梁の間に架かる
梁や床といった部材を設置します。
→この『接合部分』は『組体操のサボテン』で膝の上に立っている人を支える『腕』のイメージです。(個人的見解です。)

前置きが長くなりましたが、いよいよ鉄骨工事の要です。

先ほど書きましたが鉄骨部材は鉄骨工場で製作します。
製作した鉄骨部材は監理者が設計図通りに製作できているか検査します。= 鉄骨製品検査
鉄骨製品検査は鉄骨造の建物であれば必ず必要です。
そして合格した鉄骨部材のみ工事現場に搬入されます。

【しかし】
設計図通りに鉄骨部材を製作しても実際に作業が進んでいくと工事現場では『施工誤差』とよばれる『ズレ』が生じます。
皆さんも街中で見かけると思いますが、建築現場は職人さんによる手作業がほとんどです。
工事現場では要所要所で測量を行い適宜修正を行いますが、どんなに正確に作業を行っても人間の目では気がつかない
『ズレ』が生じてしまいます。

このわずかな『ズレ』が、鉄骨工場で精密に製作されている鉄骨部材にとっては1番の不安要素となります。

【実は】
鉄骨部材には、既存建物とつなぐ『鉄筋』の径(大きさ)・本数をあらかじめ計算して鉄筋が通る予定の位置に
事前に鉄骨工場で『孔(あな)』を開けているのです。

この『孔』の位置と実際に工事現場で組まれた鉄筋の位置がズレると鉄筋を孔に通すことができなくなります。

例えば、穴開けパンチで穴を開けたA4サイズの紙100枚を一気にキングファイルにとじようとしてもすんなりと
パンチの穴に通すことって意外と難しいですよね。

紙の場合はとじなおしたり、穴の位置を変えたりすることでができますが、工事現場では基本的にやりなおしができません。

どうしても施工できない…ということもあります。その時は工事現場で孔を開ける作業を行うことになりますが、
孔を追加することは簡単ではありません。もし余裕のない設計を行っていれば、孔を追加することで断面欠損が増え、
期待している耐力を確保できなくなるかもしれません。
孔を追加することになれば必ず検討や協議を行う必要があるので、工事現場の作業を中断させてしまうことになります。
作業が中断することは現場にとっては大問題です。

簡潔に言うと、今回の工事では鉄骨工場で製作する段階(孔の位置決定)が工事の成功を左右する『要』ということです!

【そこで】
監理者として現場代理人に、鉄骨製作図は設計図だけを見て作成するのではなく、既存建物を
実際に計測し鉄筋が通る位置がどこになるのかを確認すること、新設する合計30フレーム
すべてについてそれぞれの鉄筋が通る孔の位置を計算すること等、指示を行いました。

鉄骨部材が工事現場に搬入された9月から鉄骨フレームが組み終わった12月までドキドキでしたが、
結果、鉄骨工場で製作したとおりにすべて納まりました。

【すごい!!感動です!!】
数え切れない本数の鉄筋すべてが予定していた孔に納まりました。

この耐震改修工事は現在すべて無事に工事が完了しています。
工事完了後に工事現場を囲っている仮囲いが撤去され建物が全部見えた時は思わず『うわぁ~!』と言ってしまうほど
美しくてびっくりしました。 (※外壁改修工事も実施しました。)

耐震補強と聞くと既存建物より存在感が出ていかにも『補強しているな』と分かってしまう事例が多いと
思っていたので、こんなにも既存建物と補強フレームが馴染むのかと驚きを隠せません。

今回の耐震改修工事を通して
・設計図(設計)を理解すること
・本当に施工できるか追及すること
・不安要素は初期段階で徹底的に整理すること
・机上ばかりでなく現地を見ること
など大事なことを知ることができました。

【そうです】私はまだまだ未熟者です。

前出した『監理者として現場代理人に指示を行った…』というのは嘘です。(嘘を書いて申し訳ありません。)
本当は現場代理人さんから教えて頂きました。
普段は社内で設計を行っているので現場の話を聞けることはあまりありません。
監理者の一員として今回の工事に携われたことは自分自身の未熟さに悔しい思いをしたとともに、
今後の設計に活かしていきたい・頑張りたいと思える貴重な経験となりました。

だからこそ気持ちを改め今後の業務に取り組んでいき、『設計を理解している設計者になること』
『現場が見える設計者になること』を目標に傳設計の先輩方にアドバイス・指導を頂きながら努力する所存です。

(心の声)
設計・施工・監理それぞれについて勉強させて頂き、これからどのように仕事と向き合えば良いか
考えるきっかけをくださった現場代理人さん本当にありがとうございます。

最後に、世界中が新型コロナウイルスの話題ばかりですが、気が付けば3月中旬です。
来月は新入社員の方が入社されるので、時間があるときに机まわりの整理や掃除を行いきれいな仕事環境で
新入社員の方をお迎えしたいと思います。

令和2年度も元気にがんばります!

構造設計部 堀内